
和尚さんが日ごろ感じたことや、思ったことを日記にしています。
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第10回 シアトルより想いを込めて 「森の生きものたち」
シアトル周辺には森や湖、谷川といった自然がそのままの姿で多く残されている。ぼくの家の周りは、深い森に覆われているのだが、いくら
深いといってもそれは都市郊外、ショッピングセンターなどの商業地域から車で10分とはかからないし、住宅だってあちらこちらにけっこう多い。
しかし、ここは想像以上に豊かな自然が息づいているように思う。家の敷地内には、リスや小鳥、ウサギなどの小動物だけではない、鹿までが散歩
(?)に来る。今年子供が生まれたのか、母鹿が小鹿2頭を伴っていてとても可愛らしい。朝来ることもあれば、夜遅く暗くなってからやってくるこ
ともある。車のヘッドライトで照らし出してもさほどに驚いた様子はない。下草の何かを食みながらすたこらと歩いて森のどこかに去る。
ぼくの方もそれ以上には近づいたり驚かせたりしないようにしている。それは森に共生するもののマナーだとぼくは心得ている。
さて、そんな森の優しさに親しんでいたこの秋のある日、驚いたことに敷地内に2頭のコヨーテがあらわれた。コヨーテは狼の一種だ。
最初に出くわしたときには、ぼくも驚いたがむこうもびっくりした様子。さっと軽快に動いて、こちらの様子をうかがっている。そんな出会いが
あってからは、毎日コヨーテが来るようになった。しかし、コヨーテを恐れてか鹿の親子はすっかり姿を見せなくなってしまった。少し寂しい
気がしたものだが、考えてみれば動物達は実にうまくお互いのバランスを取り合っているようにも思われる。あらぬ争いを避けて、
鹿はコヨーテに森の一角を譲って遠慮したのであろう。その証拠に、1週間ほどしてコヨーテが来なくなると何時からか又鹿が来るようになった。
上手い共生である。ぼくは今年の春、この近くでクーガーを見たことがある。クーガーは山猫の一種、ヒョウの仲間だ。肌色は浅黒く堂々とした
体躯である。10年目に一度さえもなかなか見られなくなったという代物だけに出会った時はまさに感激で、しばし呆然としたものだ。
この森の中には、実にいろいろな動物達がいる。ご近所の奥さんに、熊の足型を取って見せられたこともあるから熊だっているには違いない。
リスやアライグマ、モグラ、兎といった小動物たちから、熊やクーガーといった猛獣までもが、この森の中でバランスを取り合って共生している。
冬枯れのこの季節、毎日零度を下回る冷え込みの夜間、どこで眠っているのだろう、と心配になったりもする。彼らが森の木や下草と共にこの森の
どこかで棲いし、生の営みをしていると思うとき、森がとてもいとおしく思えてくる。それに鹿といい、コヨーテといい、自然の森の動物たちは実
に姿が美しい。まさに野生という言葉がぴったりのように、体もつややかに引き締まっているし、動きも鋭く敏捷だ。動物園で飼われているそれら
よりはるかAに美しく、凛とした気品に満ちているとさえ思うのだが。
ぼくはここに暮らして、森があらゆるいきものの生命共生の場であることを知らされた思いがする。森は、あらゆる生きものたちに惜しみなく
生命の育みの場を与えつづけている。もちろん人間にもだ。森は決して人間だけが勝手に振舞える場ではない。それどころかもっともっと縦横
無尽につながりあって、あらゆる生命を宿す神秘で厳かな世界なのだと思う。A
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