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第11回 シアトルより想いを込めて 「スターバックスコーヒー再考」

2002.12.4

アメリカでのぼくの唯一の贅沢といえば、お昼にスターバックスに行ってラテを飲むこと。昼食代わりだ。そしてこれも唯一の楽しみといえば、 夕食にお酒を呑むこと。他には何とて欲しないのだから、ささやかな贅沢として許していただくこととしよう。

ぼくの家から車で5分とかからないところに、いきつけのスターバックスがある。すっかり常連になってしまったぼくだから、店に入っていくだ けで店員は、トールラテとシナモンツイストですねって訊く。訊くと言うよりも、告げるという感じである。時には何も言わないで、ニコッと笑って トールラテを用意したりする。ぼくも時折、「きみはなぜ僕の心の中まで見抜けるのだ」などとからかったりするのだが、そんなとき店員は水を得た魚 のようにはしゃいで、なにやら喋りまくる。早口過ぎて何を言っているのやらぼくにはさっぱり判らないが、とにかくジョークに楽しく反応している ことだけは確かだ。

この店にはぼくのほかにも何人かの常連がいる。ぼくもそうなのだが、たいがい自分の好きな席があって、決まってそこに座る。 あいにく先客があって好みの席がふさいでいるときは、予備の席となる。そのうちの何人かは、ノートパソコンを持ち込んでいて、 そこで仕事をしているようだ。ぼくは、たいがい本を持ち込んでいくのだが、パソコンにしても読書にしても当然長時間に及ぶ。 しかし店はこの長居の客を迷惑がるようなことは決してない。それどころか電源から電話回線まで用意してこういう客の便に備えている 店もあるほどだ。ぼくにとっては殊更に居心地のいい場所というわけだ。

ところで、アメリカでは、独り者が気楽に入れる店というのが本当に少ない。昼食を食べに行こうにもなかなか適当な店がない。 たいていが男女同伴の客で埋まっている。一人ではなんとも居心地が悪い。お昼でもそうなのだから夕食ともなれば尚更だ。なんとも侘し く肩身の狭い思いをするのが落ちだ。よほど知り合いの馴染みの店でない限り入りにくい。これはぼくの思いだけではないと思う。 その点スターバックスコーヒーは気楽だ。一人客も十分に居心地よくいられる。そんな雰囲気がいいのだろうか、スターバックス人気は 全く衰えを知らない。早朝5時の開店から晩9時の閉店まで客はひきもきらない。もっともその半数は、車でのお持ち帰り客だが。

さて、そこでぼくなりにスターバックス人気の秘密をさぐってみるのだが、先ずは、店のデザインセンスがいいこと。そして2番目が清潔なこと。 店内はトイレに至るまで清掃をよくしている。ぼくの観察ではこの2点に絞られると思うのだが。 スターバックスの成功を追って2番手、 3番手が追随している。タリーズコーヒーとシアトルベストだ。だが、ますます水をあけられるばかりのように思われる。スターバックスは やはりこの2点に於いて他の追随を許さぬものがある。ぼくの結論では、「スターバックスは、コーヒーをファッションにした」  と、言うことになった。そして、安らぎと悦びをコーヒーに混ぜ合わせて売っている。ぼくもそうだが、多くの人は、何もコーヒーだ けを飲みたくて行くわけではない。そこにささやかな安らぎがあるからだ。

日本のスターバックスコーヒー店も大人気で、行列の挙句座る席もないほどと聞く。そんなに流行ったのでは、安らぎも悦びも味わうゆとりす らないのではと心配になってしまう。







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