
和尚さんが日ごろ感じたことや、思ったことを日記にしています。
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第27回 「シアトル神護寺住職 西部法照」
今年も残すところあと僅かとなりました。何かとあわただしい時期ですが皆様お変わりもなくご壮健にてお過ごしのことと拝察致します。
シアトルもすっかり冬の様相、どんよりとした空と、雨の多い毎日が続いています。ここシアトルは緯度が随分高く樺太と同じくらい、北緯48度に位置
します。従って夏冬の日照時間が大きく変化し、夏の間は夜10時ごろまで明るかったのに比べ、冬は夕方4時頃にはもう帳が下りてしまいます。
夜明けも当然遅く今は8時頃にならないと明るくなりません。それに冬のシアトル名物は雨、毎日毎日冷たい雨の日が続きます。ともすれば気持ちま
でもが沈みがちになってしまいそうですが、ものは考えようで静かな内省の時間が多くもてると思えばとても穏やかな気持ちになれますし、家庭では
暖炉の火を囲んで一家団欒の楽しいときを過ごすこともできるのです。ここで暮らす多くの人々はそれぞれにこの冬の長い夜の過ごし方を工夫している
のでしょう。冬の時節だからこそシアトルらしさが深まると言えるかもしれません。
今はクリスマスを目前に控え、各家々には色とりどりの美しいイルミネーションの飾り付けが見られます。夕暮れが早いと言うことはこの
イルミネーションの美しさをなお更に楽しませてくれると言う効果もあったのだと、今更ながらに気がつきました。
シアトルから東へ車で約2時間のところにレーベンワースト言う山あいの村があります。ここは昔ドイツ人の樵たちが開拓した林業の村だったのですが、
今ではその林業も衰え二十年ほど前から始めたクリスマスグッズを売りものにした村興しが大成功、そのメルヘンチックなチロリアン風の家々と
共に州内外での人気を高めています。民宿から始まった宿泊産業は、今や数十軒のホテルが立ち並ぶほどにもなり1年間を通して観光客が絶えない
夢のある村へと変身しました。ここの成功の理由は決して村を近代化させなかったこと、村の良さ、美しさをそのまま残しながらそれを売り物にした
ことだと思います。今でも建築や店作りには村の雰囲気を壊さないよう厳しい規制が敷かれていることは言うまでもありません。近代化されていない
中にこそ穏やかな美しさを感じ、懐かしさの中に心の安らぎを読み取る気持ちは、日本もアメリカも変わりないのかも知れません。
私はここを訪れるたびにかつて美しかった日本の村々を想いおこし、変わり果てた現在の日本の風景を複雑な気持ちで考えずにはいられません。
しかし、今からでも遅くはない、山村の中に僅かに残された日本の原風景を、将来の子供たちへの尊い遺産としても何とか残してあげたいと願うのは
私一人ではないと思います。そして、それがとりもなおさず将来的にも村々を護りぬいていく確かな手段でもあると思うのです。近代化や利便性は、
私達にとって確かな魅力には違いありません。しかし、それ以上に私たちに幸せをもたらしてくれるもの、安らかな心と生活を取り戻し得るもの、
それは古き良き伝統と文化を護りぬいていくことに他ならないと痛切に感じています。殺伐とした世相を救う手だては、案外そういう古きものの見直
しの中にこそあるのだと思えてなりません。外国で暮らしてみてこそ日本の伝統の大切さが痛感されることは多くの人が感じるものです。
近代化や利便性だけを追い求める生き方から一度立ち止まって、歴史に培われた日本の伝統文化をもう一度見直し、美しい日本の原風景に立ち返って
みることが、現代日本の病巣を解く鍵になるかもしれないと考えるのですが如何でしょうか。
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