
和尚さんが日ごろ感じたことや、思ったことを日記にしています。
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第33回 「シアトル、冬の時節」
シアトル、冬の時節
シアトルもすっかり冬の季節になりました。朝は真っ白に霜が降り、外気に触れると肌を刺すような冷たさが立ち込める霧の中から伝わってきます。
アメリカでは10月の最終日曜日から冬時間(標準時間)に戻ります。一日いちにち日没が早くなるのに加えて、標準時間は、夏の間1時間すすめていた時計の
針を元に戻すのですから、緯度の高いシアトルの12月は、4時ごろにはもう陽が落ちてしまいます。日の出も8時少し前ぐらいですから日照時間は8時間ほど。
夏のシアトルとは打って変わってとても長い夜の時間を過ごすこととなります。
多くの家庭では暖炉の薪とローソクを用意して、寒くて長い夜と、それにこの時期によくある停電とに備えます。ここシアトル神護寺でも建設工事の
端材をいっぱいダンボールにつめて軒先に積み上げました。
本堂建設工事
さて、神護寺の本堂建設工事ですが、残念ながらなかなか思ったようには進捗していません。何もかもがゆっくりなのがアメリカかもしれませんが、
日本と違って戸惑うことやら気をもむことやら多々です。それでも少しづつではありますが完成に向かってはいる、といったところでしょうか。
これからの冬の寒さと短い日照時間を考えると、まだまだ気長にかからなければならないような気が致します。進まない工事にやきもきしながら、
そして資金不足の故もあって、いま本堂内の床張りを自分でやっています。
コンクリートを捏り、床面を整えながらタイルを張っていくのですが、これがなかなかの至難技、それに労力も思っていたよりはるかに多くかかります。
素人のことですからそう上手くいくはずもありませんが、週末は弟子のマルム密照も手伝ってくれて助かります。しかし、年甲斐もなく力仕事を
がんばりすぎて、古傷の膝を悪化させてしまい、立居、正座が思うに任せられなくなってしまいました。寄る年波かなと、少々の悲哀を感じながら
悪戦苦闘していますが、それでも少しづつ出来上がっていく建物の様子を見ることはとても楽しみです。ものを作り上げていく職人の喜びというか、
それに似た楽しみを今更ながらに味わっています。なれない肉体労働で毎晩ぐったりですが、でもおかげで晩酌が以前にも増して旨くなりました。
友を亡くす
一ヶ月前、日本で親しい友人の一人を亡くしました。突然の病気、入院、そしてまことに呆気無い死でした。シアトル神護寺のことにも心を尽くして
くれていた友人でした。本当に残念な思いだけが残る死でした。死は背後から迫って来る、と言われますが、彼の死は真正面からやってきたような
気持ちにさえさせられた死でもありました。奮命の猛鬼は時を簡ず、と言いますが、その猛鬼は遠きに非ず、我が身辺の近きに在りしか、といった
気持ちです。子供好きで、周りの人を楽しませるのがとても上手かった彼、三十年近くもの間家族ぐるみのお付き合いだった彼の突然の死は、
生きていることが如何に危うい生命のともし火によって保たれてるのか、それを思い知らされたものです。
私たちは、ともすればいま自分がこの世に生きているということすら忘れてしまうほど日常の生活の中に流され続けているのではないだろうか。
あらためて生命の不思議さにはっとさせられた思いです。普段はまったく当たり前のことであり、あらためて考えてみることさえしない、
生き続けている自分の命、生かされている生命の尊さにあらためて想いを致したことです。諸行無常、愛別離苦の説法、ひとときもその理を逃れ得ず。
今はもう彼の冥福を祈ることしか為す術はありません。
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